木漏れ日の下で 君が泣いている。
 
 
 
 
 
 
 
私に嘘を付いても無駄なのだ。
君はわかってやっている。
 
私の気を引きたくてやっているんじゃない事も見通している。
 
 
私に迷惑をかけまいと、
君は君なりに私を思い遣っているのだろう?
 
 
 
 
「・・・そのような気遣いは無用だと、何度言わせるのだ・・・。」
 
 
 
 
その一言もなかなか伝えられぬ自身に苛立つ。
 
君は優しい。
そして可憐。
 
 
その瞳に捕らえられ、
視界から逃れることはできなくなった。
 
・・・いや、逃れる必要はないのだ。
 
私の方からわざわざ君の視界に入っていくことさえ、あるのだから。
 
 
 
 
 
 
 
涙を、流しているところに出くわした。
 
沙羅双樹の樹の下で、
空を見上げながらその頬を伝う涙。
 
 
 
 
 
声をかける勇気すら、私は持ち合わせていなかった。
そっと閉じた瞳をあけ、
その姿を見護ることが精一杯だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その涙は何を意味するのだ?
 
そう、一言。
たった一言が出てこない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
。」
「なぁに、シャカ。」
 
 
その瞳の中にある悲しみを、私の手で消し去ってしまいたい。
淡い光に包まれた処女宮で、
と私は真っ直ぐに向かい合っている。
 
 
 
「・・・・・・。」
「シャカ、どうしたの?」
「・・・なんでも、ないのだ。」
 
 
 
瞳を閉じたまま。
君の瞳を見つめることを拒否してしまう。
私からを求めたのに。
私からを拒んでしまった。
 
 
 
 
 
 
 
 
季節はゆっくりと新緑を呼び込む。
この沙羅双樹の園も、
若葉が次々と命を輝かせるようになった。
 
 
 
 
涙は大地へと注ぎ込まれる。
次から次へと、
沙羅双樹の樹の木漏れ日の下で、
君がまた、泣いている。
 
 
 
 
 
 
 
 
痛みの分だけ、時間よ戻れ。
には・・・喜びしか与えたくない。
 
私はそっと近づき、
しっかりとその背を抱きしめた。
 
 
小さく震え、私を見上げ、
その身を委ねてうつむいてしまう。
 
 
 
 
 
「・・・ごめんね。」
「なにも君が謝ることはない。」
「うん・・・。」
 
 
消え入るような声は、この季節には似合わない。
明るい声が、透る声が似合うのだ。
・・・だが、は泣いている。
私は痛みや悲しみを癒す方法ばかりを考えていた。
 
 
 
 
 
「私に気を遣っているのかね?」
「ううん、そんなんじゃない。」
「・・・ならば、何故このシャカの胸の中で泣かぬのだ。」
 
 
 
 
 
受け止めたかった。
受け止めていきたい。
 
の悲しみを私が消し去ってやろう。
私にはそれくらいの力はある。
君を微笑ませる力も、
この身には備わっているのだ。
 
 
 
 
 
「・・・私・・・私・・・。」
「・・・すまない、・・・。」
「・・・・・。」
「私にもう少し勇気があれば、
 がこんなにも泣かずに済んだのにな・・・。」
 
 
 
理由はわからなかった。
が言ってくれるまでは、と、黙って抱きしめていた。
 
 
 
 
 
 
「いつか、シャカに話せるくらいの強さを・・・。」
「・・・急がなくともいい。」
 
 
 
 
 
 
 
優しき季節は君の、
のための季節でもあるように。
すべてが君を包むように。
私も共に包まれている。
 
 
 
、私はいつも君を受け止める用意はできている。
 ・・・君はこのシャカがいるのだ・・・もっと、頼ってはくれないか。」
「ありがとう、シャカ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私がこの世で一番哀しいと思うことは、
多くの闘いではない。
人々が苦しむことでもない。
友が死することでもない。
 
愛しい人よ、
どうかこのシャカを頼ってくれ。
 
私はの傍にいる。
終わりがないように、ずっと。
 
 
巡りゆく季節の中、
の傍を決して離れぬよう・・・
永遠の園で誓おう。









 
 
 
 
 
 
 
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